一位の人

Essay

最寄駅から自宅まで徒歩10分。

早歩き+線路をスムーズに渡ることができれば7分で帰ることができる。

改札に一番近い車両ドアを知っている。

ドアが開いたら先頭を切って飛び出し、そのまま勢いよく改札を出て自宅までの道を歩く。

そこは一本道で、後ろから迫ってくる人の波を背中に感じている。

あと30mほどで線路を渡る。間に合うか。

電車が来てしまっては、先頭を切ってここまできた意味がなくなってしまうではないか。

カンカンカンと音が鳴る。

間に合わなかった。

後ろから子供が走って近付いてくる音が聞こえた。

その子供は私を見て「一位の人だ!」と言った。

遮断機が上がると同時に歩き出す。

目の前をその子供が元気よく走り抜けた。

一位となった彼は誇らしげに笑みを浮かべている。

線路を渡り終えると、私とは反対の方へ帰っていった。

父親と思われる人物と何やら楽しそうに話をしながら帰るその背中をじっと見つめた。

勝負はまだ終わっていないぜ、と言わんばかりに横を走り抜けてみようかと

ほんの一瞬思い立ったがすぐにやめておこうと思い直した。

その行動が変態だからではない。

反対方向へ走るのが面倒だっただけだ。

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